英語を勉強してきて通訳にチャレンジしたいけど、自信がなくて応募できない。
応募しても経験や実績がなくて採用されない。こんな悩みはありませんか?
先輩に相談しても「最初は手当たり次第に応募するしかない」と言われ困っている人も多いのではないでしょうか。
そこで、今回私が通訳デビューに最適と思う工場の海外研修生通訳の内容と理由をくわしく解説します。
最後まで読んで、ひとりでも多くの方にチャレンジしてもらえたら嬉しいです。
自己紹介と経歴
解説の前に少し自己紹介させてください。
私は55歳で真剣に英語学習を始め、2020年定年退職後に通訳になりました。
しかし、最初は実績も経験もない私には全く仕事はありませんでした。
それが工場の海外研修生通訳でデビューして以来、その工場研修生通訳のリピート、インバウンドツアーの通訳ガイド、ビジネス訪日客のアテンド通訳等、多忙な日を過ごしています。
工場の海外研修生通訳とは
まず、工場の海外研修生通訳がどんな仕事か説明します。(私の勤務した工場の事例)
概要
- 場所:工場の現場(基本ライン作業)
- 指導者:受入現場のグループ担当者
- 研修生:海外関連会社社員(インド、南アフリカ、アジア系が多い)
- 通訳内容:作業指導、安全教育等
- 通訳方法:マンツーマンで逐次通訳
- 勤務時間:8時間+残業(生産連動)
2交代制勤務もあり(一例下記)
早番 6:30〜15:15
遅番 16:30〜1:15 - 服装:作業着、ヘルメット、保護メガネ、安全靴等
- 環境:空調はありますが、オフィスではないので服装で調整が必要
- 騒音:機械、工具の音が大きいです
- ランチ:45〜60分、工場内食堂あり
- 休憩:2時間に1回10分程度
- 給与:コンビニの2倍程度
- 手当:残業、休出、深夜 約20%増
(深夜残業だと約50%増) - 通勤、赴任旅費、滞在費:負担あり
通勤は会社バス、滞在は寮orホテル
具体的な通訳の仕事
基本的には、日本人指導者から海外研修生への作業教育を逐次で通訳します。
オリエンテーションや安全教育では複数の研修生に通訳することもあり、資料やレポートの翻訳を頼まれることもあります。
研修生が仕事を覚えてくると、作業中の指導や質問の通訳でラインサイドに待機します。(2時間立ちっ放しこともあります)
必要な英語力、専門用語への不安
通訳に応募するのに自分の英語力で大丈夫か?専門用語が理解できないのでは?と不安な方も多いと思います。
しかし、通訳を目指して勉強している方であれば日常会話+αで大丈夫です。
+αとは次の3つです。
- ①ものづくり・工場に興味がある人
- ②ものおじしない人
- ③ホスピタリティーマインドのある人
専門用語は用語集が配付されたり、現場の担当者が専門用語は通じないことを理解して優しく説明してくれるので心配はありません。
海外研修生通訳の1日の事例
具体的なイメージが湧くように、海外研修生通訳の1日をご紹介します。
🔳早番の場合
- 4:30 起床 朝食、身支度
5:30 出発(会社送迎バス)
6:00 会社に到着して着替え
6:20 業務開始 朝礼の通訳
6:30 最初は作業指導の通訳 作業習得後はラインサドで待機
10:30 昼食 食堂か弁当
11:15 午後の作業 待機
適宜 面談通訳や書類翻訳
15:30 業務終了 退社
16:30 寮、ホテル帰着
買物、入浴、夕食、その他
21:00 就寝
🔳遅番の場合
- 11:00 起床 朝&昼食、身支度
買物、その他プライベート時間
15:30 出発(会社送迎バス)
16:00 会社に到着して着替え
16:20 業務開始 朝礼の通訳
16:30 最初は作業指導の通訳 作業習得後はラインサドで待機
20:30 夕食 食堂か弁当
21:15 後半の作業 待機
適宜 面談通訳や書類翻訳
2:30 業務終了(1時間残業の場合)
3:00 寮、ホテル帰着 入浴
(私は食事は摂りませんでした)
4:00 就寝
他の通訳との比較
他の主な通訳との違いは次のとおりです。
比較項目 | 研修生 | 講演等 | 会議 | アテンド | 医療 | 通訳案内 |
通訳形態 | 逐次 | 同時 | ウィスパ | 逐次 | 逐次 | 逐次 |
対面状態 | 1:1 | 1:多 | 複:複 | 複:複 | 1:1 | 1:複 |
英語難易 | 2 | 4 | 4 | 案件次第 | 5 | 3 |
聞き直し | ◎ | × | ○ | ◎ | △ | ○ |
予習の量 | ◎ | × | × | △ | × | × |
仕事環境 | △ | ◎ | ◎ | 案件次第 | ○ | △ |
これで、ほぼ海外研修生通訳がどんな仕事かイメージできたのではないでしょうか。
通訳デビューに工場の海外研修生通訳が適している理由
私が思う海外研修生通訳が通訳デビューに適している理由は次の5つです。
- ① 新人でも採用されやすい
- ② あまり難易度の高い英語は不要
- ③ 通訳に困っても何とかなる環境
- ④ 通訳で“ものごと”が進む達成感
- ⑤ 度胸と自信がつく
1 新人でも採用されやすい
大手企業の海外研修生は一度に多く来日するため、通訳の求人も多く経験の浅い(無い)新人も採用されやすいのです。
私が最初に採用されたのも大手自動車会社の海外研修生通訳でした。
2 あまり難易度の高い英語は不要
これは英語が低レベルということではなく、基本的に特定の作業の通訳なので使う構文や単語が限られるという意味です。
医療や投資のように一つ数字が人命や巨額の損失につながることはなく、初心者にはとっつきやすいと思います。
それに海外研修生はほぼ非ネイティブで細かな発音や文法は問われません(ミスしてもいい、という意味ではありません)
3 通訳に困っても何とかなる環境
会議通訳はオフィスで、講演会等は話者のペースで通訳するため、途中で訳出できないと大変なことになります。
それに対して海外研修生通訳は直接「当事者と対面」で「現物」があり、分からなけれ聞き返すことができます。
内容が理解できなければ説明してもらう、部品や設備の名称が訳せなくても現物を指差さしてなんとかなります。
4 通訳で”ものごとが進む”達成感
例えば、担当者のアドバイスで研修生の動きが見違えるようになった。作業のポイントを通訳して出来栄えがグッと良くなった。
そんな自分の通訳で人や物がぐんと良くなるのは、本当にやりがいと達成感を感じます。
そして、それが次から次へと世界中に出荷されいくと思うと感激します。
5 自信と度胸がつく
基本、海外研修生通訳は研修生1人に1人か職場で1人任されて、講演会のように複数で担当したり、誰かのフォローはありません。
最初は不安ですが、逆にこれが「何があっても自分でなんとかする」覚悟になります。
その覚悟で通訳して何度も達成感を感じ、それが「自信」になり、何があっても何とかする!という「度胸」になりました。
海外研修生通訳に必要な資質とは
英語力
私が現場で必要と感じたのは、高度な「語彙力」や正確な「文法力」ではなく「英語コミュニケーション力」でした。
「英語コミュニケーション力」とは、
- 言葉を訳すのではなく
「意図を伝える力」 - 言葉だけでなく、身振り手振りでも
「正確に伝える力」 - 自分の知らない語彙を自分の言葉で
何とかする「言い換え力」 - 相手をリラックスさせる
「英語雑談力」
具体的には、
英検準1級、TOEIC800点、
ビジネス英語初/中級レベル、
工場の知識・経験があれば、
英検2級、TOEIC600点、
日常会話ができるレベルであれば、
大丈夫だと思います。
体力
通訳も工場現場のルールに従って行動する必要があり体力は必要です。
- 最低2時間連続で立っていられる
- ヘルメットや保護メガネが平気
- 2交替勤務のリズムに順応できる
- 工場環境(騒音、臭気、気温)耐性
- 寮やホテルでの一人暮らしが平気
マインドセット
マインドセットはシンプルに次の3つです。
- 目の前の困っている人を助ける!というホスピタリティー精神
- 通訳は言葉を訳すのでなく意図を伝えるマインド
- 何があっても自分で何とかする覚悟
工場通訳に向いている人と不向きな人
海外研修生通訳に向いている人の観点で整理すると次のようになります。
- 立ち仕事や工場現場の環境が平気
- 寮・ホテル生活や夜勤等のライフスタイルに対応できる人
- とにかく、有償通訳の第一歩を踏み出したい人
- 人と話すのが好き、声が大きい
- ものづくりや機械が好き
- 立ち仕事や工場現場の環境が苦手
- 自宅が離れられない
- ネイティブの通訳を目指している
- 声が小さい、人見知りが激しい
- 機械やロボットが苦手
海外研修生通訳をするメリット、デメリット
最後に私の思う海外研修生通訳のメリット、デメリットは次のとおりです。
1 自分に自信と度胸がつく
2 シンプルに通訳で収益を得る喜び
3 通訳した実績が履歴書に書ける
→次の仕事に採用されやすい
1 なんでも「通じればOK」になってしまう可能性あり
2 非ネイティブばかりで正確な文法や発音に対する意識が下がる
まとめ
いかがだったでしょう。
工場の海外研修生通訳の内容とレベル感と通訳デビューに最適であることが理解してもらえたのではないかと思います。
最後に通訳デビューに工場の海外研修生通訳が適している理由を繰り返します。
- ① 新人でも採用されやすい
- ② あまり何度の高い英語は不要
- ③ 通訳に困っても何とかなる環境
- ④ 通訳で”ものごとが進む”達成感
- ⑤ 度胸と自信がつく
ここまで読んで、工場の海外研修生通訳にチャレンジしようと思った方はぜひ求人を検索してみてください。
もし、もう少し詳しく知りたい、具体的な会社を紹介して欲しい方は喜んで説明しますのでDMを送ってください。
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◾️スマホの辞書アプリ(オフラインで使用できるもの)
電子辞書は重く、工場内は電波が届きにくいのでオフライン使用できる辞書アプリをお勧めします。
私は、ウィズダム英和・和英辞典(有料¥3,000)を使っています。
注:工場内でのスマホ使用が制限されている場合があるので事前確認をお忘れなく。
持ち物、準備物
バインダー
クリアファイル
普通のノート
フリクションペン(黒、赤)
ヘルメットの汗どめ
マスクガード
皆さんのチャレンジを期待しています。
そして、いつか皆さんと工場の現場でお会いできることを楽しみにしています。