全国通訳案内士を目指しているのにオワコンと言われ、不安を感じている人が多いと思います。
実際に受験してその科目数の多さと合格率の低さに、本当に時間をかける価値があるか?疑念を感じている人もいるのではないでしょうか?
私は今年全国通訳案内士試験に合格し62歳で通訳のキャリアをスタートしました。
そこで実感したのはオワコンとは真逆のアドバンテージと将来性でした。
未経験の私が通訳デビューができたは全国通訳案内士に合格したおかげ!このブログではその実体験を元に全国通訳案内士の魅力と将来性についてお伝えします。
結論
キッパリと全国通訳案内士はオワコンではありません。
その主な理由は次の3つ。
これは私が全くの未経験から通訳デビューして肌身で感じたことです。
- 仕事獲得に断然有利!
- 無資格より格段に待遇が良い!
- 自信と自覚を持って活動できる!
私の経歴
詳しい解説の前に私の通訳に至る経歴をご紹介します。
- 2015年 全国通訳案内士受験開始
- 2020年 定年退職(自動車会社生産エンジニア)
- 2023/2月 全国通訳案内士合格、通訳ガイド派遣会社登録
- 3月 旅程管理主任者資格取得、アテンド通訳2日(高山)
- 4月 通訳ガイド半日(奈良)インバウンドツアー添乗9日(大阪-東京)
- 5月〜7月 自動車会社海外研修生通訳
- 9月 F1日本GP インフォメーション英語スタッフ
- 11月 企業の取引先様のインバウンドツアー添乗4日
- 2024/1月 酒類ブランドアンバサダー様の工場視察3日
もし、全国通訳案内士試験に合格していなければ、こんなトントン拍子で仕事に恵まれることは絶対になかったと思います。
この記事が通訳案内士試験にチャレンジする皆さんがオワコン論に惑わされず、通訳の道に進む一助になれば嬉しいです。
全国通訳案内士オワコンといわれる理由
まず全国通訳案内士の魅力と将来性を説明する前に、全国通訳案内士がオワコンといわれる理由と現実を検証します。
2018年の法改正による無資格ガイドの容認
まずは、2018年の通訳案内法改正による無資格ガイドの容認です。
全国通訳案内士とは「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする」と通訳案内士法に規定されています。
2. 通訳案内士法の主な改正内容
改正通訳案内士法の概要(観光庁HP)
(1)業務独占規制の廃止・名称独占規制のみ存続
「通訳案内士」ついては、業務独占資格から名称独占資格(※)へと見直し、幅広い主体による通訳ガイドが可能になります。
また、改正法により、これまでの「通訳案内士」は「全国通訳案内士」とみなされますので、既に資格をお持ちの方は登録証の再発行等の手続きは必要ありません。
※資格を有さない者が、当該資格の名称や類似名称を用いることを禁止する規制。
つまり、この法改正により通訳案内士の業務独占規制が廃止され無資格でも仕事ができるようになったのです。
無資格で仕事はできるようになりましたが、もしあなたがガイドを頼むなら、全国通訳案内士と無資格ガイドとどちらを選びますか?
自動翻訳(AI)ツール進化による通訳不要論
次にオワコンといわれる理由が、Google翻訳やポケトークなど自動翻訳(AI)ツールの進化です。
現代のAIの発展には目を見張るものがあり、特にChatGPTのような生成AIの文章はまるで人間が書いたように自然。
今後の更なる進化で通訳は不要になるという意見です。
定型的な作業や単純の仕事はそうかもしれません。
しかしその場に応じた微妙なニュアンスや適切な表現はAIには無理。
逆にAIが対応できない高レベル案件の通訳者の需要が高まるはずです。
マイナーな資格で権威性がない
全国通訳案内士は国家資格で、英語学習者の中では英検1級、TOEIC満点と並んで英語3冠と称されています。
しかし、英検1級やTOEIC満点は就職や転職で有利になるのに全国通訳案内士は見向きもされません。
全国通訳案内士は英語力ではなく通訳としての力量を担保する資格です。
私が経験したインバウンドツアーの添乗や工場の海外研修生通訳等の関連業界では確実に一目置かれていましたよ。
全国通訳案内士がオワコンではない理由
逆に私が実感したオワコンではない理由は次のとおりです。
仕事獲得に断然有利
全国通訳案内士は通訳や通訳ガイドの仕事を獲得する大きなアドバンテージになります。
それは全国通訳案内士の資格が英会話能力だけでなく、外国人のガイドに必要な日本事象に対する知見がある証明だから。
特に初めて通訳の仕事獲得するのに有利です。
通訳は経験と実績が優先されますが次に声がかかるは有資格者です。
無資格より格段に待遇が良い!
法改正により無資格でも仕事はできますが、実際は無資格のガイドと比べて待遇(給与)に差があるケースが多いです。
また将来自分で直接クライアントを獲得する場合も、全国通訳案内士の資格があればプロとしての信頼性を示し高い料金を設定できることが可能!
これはある会社の求人ですが、全国通訳案内士の資格があれば無資格者に比べ約10%も高額!
自信と自覚を持って活動できる!
最後は全国通訳案内士であることの自信と自覚です。
仕事に不測の事態やトラブルはつきものですが、全国通訳案内士=難関の国家試験に合格した自信があれば落ち着いて対応することができます。
また自覚を持って責任ある対応することでクライアントの信頼も獲得できます。
私も最初のインバウンド添乗で急に約130人坐禅体験の通訳を任されビビりましたが、「全国通訳案内士に合格したからできるはず!」と自分に言い聞かせて無事に遂行することができました。
4. 具体的な事例
ここからは全国通訳案内士資格がオワコンでない具体的な事例を紹介します。
全国通訳案内士資格取得前後の仕事の差異
これは私の経験ですが、全国通訳案内士資格取得前はリクルートやIndeed等の求人に応募してもほぼ書類で却下。
約2年間はボランティアが精一杯で、単発で数回イベント通訳に採用されただけでした。
ところが全国通訳案内士取得後はわずか3ヶ月で、訪日外国人アテンド通訳、インバウント観光添乗、通訳ガイドと立て続けに仕事を得ることができました。
ここで「全国通訳案内士」の信頼性は絶大だと確信しました!
取得前:いくら経験と英語力をアピールしても信頼されず却下
取得後:未経験でも全国通訳案内士だから大丈夫!と採用
具体的な仕事内容と収入
全国通訳案内士の仕事内容は多岐にわたり、観光、ビジネス、イベントなど幅広い分野で活躍できます。
具体的な仕事内容とそれに伴う収入の一例です。
- 観光ツアーガイド: 各地の観光名所や文化財のガイドを担当し、観光客に対して日本の魅力を伝えます。日給1万円から特別なツアーでは5万円以上の収入が期待できます。
- 国際会議通訳: 外国からの来訪者や国際会議での通訳を行います。1回の仕事で数万円から10万円以上の報酬が得られることもあります。
- アテンド通訳: 外国から所定の目的で来日したゲストの通訳を行います。時給や日給で時給数千円または1日2万円以上の収入が期待できます
- イベント通訳: 外国人アーティストのコンサートや国際的なスポーツイベントでの通訳を担当します。単発の仕事であっても数万円以上の報酬が期待できます。
収入は経験と実績の積み重ねで更に増えます!
コロナが収束し2025年には大阪万博が計画されており、今が資格を取得するチャンスだと思います。
全国通訳案内士の将来性
次は全国通訳案内士の将来性について。
コロナ収束後のインバウンド復活による通訳の需要増加
このグラフはJINTO(日本政府観光局)のプレスリリース(23.8.16付)です。
このように訪日外国人数は2022年8月から復活し2023年7月には、中国とロシアを除いてほぼ2019年のレベルになり通訳の需要も復活しています。
しかしその一方でコロナ禍で廃業した通訳者が多く、今後全国通訳案内士はオワコンどころか需要増加するのは明らかです。
JINTO(日本政府観光局)23.8.16プレスリリース
2022年8月~2023年7月訪日外客推移(2019年同月⽐)
訪日外国人の需要変化「モノ」→「コト」による通訳ニーズの増加
外国人観光客やビジネスの需要が「モノ」から「コト」に変化しているのも全国通訳案内士にとって追い風です!
2019年までのインバウンドは、“爆買い”に象徴される「モノ」が中心で通訳の需要は限定的でした。
しかしコロナ後は日本固有の歴史・文化体験のような「コト」への需要が高まり、高品質な通訳=全国通訳案内士へのニーズが増加しています。
「コト」の需要に対応するには現場の繊細なニュアンスや空気感が伝える必要があり、高いスキルを持った通訳の需要は高まる一方です。
全国通訳案内士は受験を通してそのスキルが身につくので、将来は非常に明るいと言えます!
6. 全国通訳案内士試験にチャレンジするメリットとデメリット
ここまで、全国通訳案内士が実際はオワコンでない理由と将来性を説明してきました。
しかしその一方で、合格率11.1%(2018-2022年平均)の高難易度の国家試験であり覚悟を決めて受験する必要があります。
そこで全国通訳案内士受験のメリットとデメリットを整理しました。
- 高い語学力とコミュニケーション力の定量的な証明が得られる
- 通訳ガイドや外国語関係の高単価の仕事に就きやすい
- 自分の意思で幅広いジャンルの仕事にチャレンジできる
- 試験勉強を通して英語力だけでなく日本歴史、地理、一般常識、通訳実務、及びコミュニケーションスキルが身に付く
- 試験の合格率が低く高いモチベーションと勉強時間の確保が必要
- テキスト、受験料、必要に応じてスクール等の費用が必要
- 合格しても安定して仕事があるわけではない。
(通訳ガイドの仕事だけで生活するのは困難)
全国通訳案内士試験は合格率が低くデメリットもありますが、試験勉強で得られた知識は一生のスキルになります!
受験生へのアドバイス
最後に全国通訳案内士試験を受験する方へのアドバイスをお伝えします。
すでに何度か受験してご存知の方もいると思いますが、私が合格した時に実行した内容もあり参考になれば嬉しいです。
試験のガイドライン、試験内容の把握
先ず受験する年の全国通訳案内士試験とガイドライン、特に科目ごとの免除申請早見表を熟読してください。
出題の範囲やポイント、免除申請できる資格を正しく把握するのがポイントです。
また昨年科目合格した方はその免除申請方法を熟読し申請漏れの無いようにしてください。
長期的な受験計画と実行
次は受験計画です。
全国通訳案内士試験は5科目もあり一夜漬けで合格は不可能です。科目免除を狙うなら1年、最低でも6ヶ月の長期計画を立てるようにしましょう。
勉強スケジュールは現在の仕事や科目免除で異なりますが、私の場合1日平均3時間は必要でした。
各科目の傾向と対策
全国通訳案内士試験は大学の入学試験や英検とは全く異なる傾向があります。
その傾向を理解しないと、実力があっても合格するのは難しいのが現実。
その対策は過去問で傾向を把握してその関連事項を広く学習する事です。
難問、奇問が多いと言われる全国通訳案内士試験ですが、しっかり過去問を分析して計画的に勉強すれば合格ラインの60〜70%は取得できるはず。
観光に関する情報にアンテナを高く立てる
次のアドバイスは観光に関する情報にアンテナを高く立てることです。
その理由は全国通訳案内士試験ガイドラインにあります。
日本地理、日本歴史及び一般常識についての筆記試験は、外国人観光旅客が多く訪れている又は外国人観光旅客の評価が高い観光資源に関連する地理、歴史並びに産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識を問うものとする。
全国通訳案内士試験ガイドライン
外国人が多く訪れる場所や評価は変化するため、常に観光に関する情報にアンテナを高く立て最新情報をキャッチすることが有効です。
あきらめない!
最後に1回や2回であきらめないことです!
正確な平均合格回数は公表されていませんが、私の周りの資格取得者の平均は少なくとも3回以上です。
繰り返しますが、私が合格したのは7回目です。
特に2回目落ちると最初に合格した科目免除が失効してガックリきますが、計画的に傾向と対策して勉強を続ければ必ず合格できます!
まとめ
全国通訳案内士はオワコンではありません。
英検やTOEIC®️のように一般的ではありませんが、観光業界、通訳の世界ではアドバンテージのある資格です。
簡単な試験ではありませんが、合格すれば通訳という一生モノのスキルと幅広い可能性を手に入ります。
オワコン論に惑わされず、全国通訳案内士にチャレンジしてください!
以上「全国通訳案内士はオワコン?実際に試験に合格してわかった優位性と将来性!」でした。